村から随分離れた森深くに、一軒の小屋があった。
一見人が寄り付かない様な小屋にも、よくお客さんが来たりする。
今日も可愛らしい少女が一人。
「ルーチェ」
「また来たの?」
「うん!ルーチェのお話が聞きたくて」
曇りのない純粋な笑顔を向ける少女。
ルーチェと呼ばれた金髪の少女は小さな少女の頭を撫でた。
無表情ながらも優しい手付。
「何の話がいい?」
「前ルーチェが言ってた“光明の魔女”の話!!」
眉を顰め、言葉を濁す。
「あまりいい話ではないが・・・」
「いいの!」
それでも少女はキラキラとした目をルーチェに向けてきた。
少女は一度言い出したら聞かない。
ルーチェは諦めた様に溜息を吐き、言葉を紡ぎ出した。
森の奥深くに少女がいました。
少女は心優しく、動物や人、精霊にまで好かれる人でした。
そんな少女はとても強い力を持った魔女で、光明の魔女と言われていました。
光明の魔女と言えば魔女の中でも精霊と契約した数少ない者でした。
契約した精霊は光と癒しの力を持ち、多くの人々に頼られていました。
夜中に来たとしても嫌な顔一つせず何時も笑顔で治療する彼女は、
何時しか有名になっていました。
ある日、噂を聞きつけてとある伯爵が光明の魔女を頼ってきました。
男は息子が熱を出したまま下がらないのだと言います。
光明の魔女は早速治療しに行きますが一目見ただけで治せないと言いました。
ですが納得できない伯爵はいくらでも金は出すと食い下がりました。
光明の魔女はキッパリといりませんと言います。
全部お金で片付くと思っていた伯爵は、慌てて地位も用意すると言いますが彼女は首を振るばかりでした。
金も地位も用意すると言うのに、一目見ただけで近寄りもしない彼女に激怒します。
それでも光明の魔女は静かに其処に佇み、伯爵を見つめるだけです。
何時も笑顔だと噂だった彼女が無表情に見つめてくるのに気づいた伯爵は眉を顰め、
諦め気味に問いました。
だったら診察でも、いや病名でも教えてくれと。
ですが光明の魔女は言えないとばかりに首を横に振るばかりです。
何故何もしてくれないと、伯爵は益々怒気を強めて怒鳴り散らしました。
もう光明の魔女は黙り込んでしまって何も言いません。
唯最後に、爵位もお金も全部お捨てになったら治して差し上げましょうと言い残し去っていきました。
その後、光明の魔女は段々と無理難題の要求をする様になっていきました。
ついには治療もしなくなっていき、何時しか悪い魔女として人々に嫌われる様になっていました。
悪い噂とは広がるのが早く、あっという間にこの国全土に知れ渡り、ついには王族が動き出し光明の魔女を捕縛しました。
捕らえられた光明の魔女は何を聞かれても答えず、数ヵ月後牢獄の中で死に絶えました。