勝手にお茶の席に座り、紅茶を飲んで居座る気満々のエディエールを見、
ジュリエッタは眉を顰める。
「婚約は破棄と言う事で、さっさと帰って頂戴」
「ふふふ、無理です。まあ、急でしたしこの件は保留と言うことでどうです?」
「・・・仕方ないわね」
ジュリエッタは疲れた様に深くため息を付く。
「ありがとう御座います姫」
「ちょっと!いい年して手の甲にキスしようとしないでよ!!」
「いい年、そうですか?私はまだ30才ですよ?まだまだ盛んな時期です」
「嫌々、30才はもうオッサンだ!しかも盛んって・・・最悪だなオイ。
それに手の甲にキスして許されるのは29までだ!」
「おや、それは随分な偏見ですね」
そう何を隠そうエディエールとジュリエッタの歳の差は14才。
こんなに離れていて幼馴染と言うのも可笑しいが、二人は何かと昔から因果があり会うことが多いのだ。
だが歳が離れすぎていていてエディエールが求婚しているにも関らず、ジュリエッタの婚約者候補に挙がらなかったのである。
「姫様、口調が崩れております」
マリアンヌが注意するが、一回暴走したジュリエッタは早々止まらない。
「呼び方だって何気に王子って呼ばせてるのを知ってるんだから!!
30過ぎで王子何て厚かましいにも程がある!」
「別に何歳になっても王子は王子ですし、
強要されている訳でもありませんが」
セシルも間違いを正すが尚も、ジュリエッタの暴走は止まらず、それど頃か拍車がかかる。
「10代ですっていう顔で実は30のオッサンっていうあんたと結婚なんて真っ平御免よ!!」
「ふふふ、何を言うのです、若作りはいいことですよ。
ああ、姫は年上好きでしたね。私が若く見えるのが不満なんですね」
「そこじゃない・・・って、え!?な、何で知ってるのよ!は、まさかお兄様がぺらぺらと喋ったんじゃ!?」
「いえ、誰にも聞いてません。普通に見ていれば分かる事です」
「「普通は分かりません」」
またもやセシルとマリアンヌの声がはもるが、当の二人は聞いていない。
「嫌〜そんなところ気づかないでよ!!」
「ふふふ」
「と、姫をからかうのは此処までにしましょう」
エディエールの言葉に何か引っかかるものがあったが、
さっきとは打って変わって真剣な表情になる二人。
そんな主に慣れているのか、セシルとマリアンヌも気にした風もない。
「此処に来る途中、ジェノバで戦争の準備らしきものをしているのを見ました」
「そう」
「それだけですか?ジェノバはイリダートと仲が良くないと伺ってますが」
「一大事じゃないんですか?」
エディエールの言葉を引き継ぎセシルが問う。
「あれ?結構有名だったような気がするけど」
「此処数十年は戦争もなく平和でしたから、ご存知ないのも不思議ではありません」
マリアンヌの言葉に面倒だなと呟く。
「と言うとあの噂は本当と言う事ですか?」
「ム、やっぱり知ってるんじゃない」
「ええ、ですがあくまでも噂であって、本当だとは思っていませんでしたから」
「まあ、普通はそうでしょうね」
「ジュリエッタ様、セシル様がご理解できないようですが」
首を傾げるセシルを見かねて、助言するマリアンヌ。
「・・・言ってなかったの?」
「先ほど言った通り、確信を持ってませんでしらから」
「・・昔からイリダートは精霊や神に守られていると言われているの」
「それも月に関する精霊や神ですね」
「そう、昔々千年も昔のイリダート王は月の女神と契約したの。
どうやって月の女神を見つけたのかはさだがじゃないけど、兎に角女神に会い契約をした。
その後王が死んでも尚、月の女神はイリダートを守護している。
だから戦になったとしても、大丈夫なの。
細かく言ってどういう風にかは、話せないわ。一応国家機密だから」
ジュリエッタは一応と言うがかなり重要な情報だ。
そして守られていると言うのも厳密に言うと月の女神に契約として縛られているのだ。
「そんな重要な話し、姫の一存で話しても良かったんですか?」
「大丈夫よ。国家機密と言っても、これぐらいなら差し障りないでしょうし、
噂になっている事よ。それに・・・」
チラッとエディエールを見、微笑する。
「貴方だったら他言しないでしょ?」
「姫に信頼されているようで何よりですよ」
イリダートでは契約者が一番権力として国を動かす仕事を担っていた。
たとえそれが17才の少女だとしても例外はない。
現在契約しているのはジュリエッタだ。
よってジュリエッタが今王家を動かしているのだが、
これは極々一部の人しか知らないことである。
当然エディエールも知らない。
そしてジュリエッタが契約によって色んな事を、制限されているとうのも知らない。
だがエディエールは薄々気づいているのかもしれない。
その証拠に好きあらば、国とジュリエッタを切り離そうとしている節がある。
いい例が、強引過ぎる婚約だ。
「そうね。信頼はしているわ。何だかんだ言っても長い付き合いだし、私が困ることはしないんでしょ?」