俺は一生弟子を取る気はなかった。
面倒だし、そんな器じゃない。
でも一番の理由は、餓鬼が嫌いという事だ。
煩いし我儘だし世間を知らない。
魔法協会から一方的に送り付けられて来る奴は、
いつも餓鬼で金持ちを鼻にかけた根性なし。
まあ、そんな奴は俺がみっちり扱いてやり、最終的には逃げ出されるのだが。
この時点ではまだ試験であって修行ですらない。
そんなんひ弱で魔法使いなんてやってられるか。
魔法使いは以外に体力勝負なんだぞ。
そんなこんなで弟子になる前にいなくなる餓鬼共に嫌気をさしていた俺。
今回もそんなんだろうと決め付け、適当にあしらってやろうと思っていた。
なのにいつの間にかあいつのペースに乗せられ、弟子として扱っている。
何だかな。
あいつといると調子が狂う。
「師匠出来ました〜!ほら!!」
「おま、危ないから振り回すな!!」
手の平に出た炎を嬉しそうに振り回し見せる。
きっと魔法が好きなんだろう。
目がキラキラと輝いており、次は何を教えてくれるのか期待に満ちた様な感じだ。
「えへへ、すいませーん。つい嬉しくて」
全然謝る態度じゃないな。
口調もだが、尚も振り回すという行動を見ても反省という色が見えない。
こいつには何を言っても駄目だ。
此処で怒れば俺が疲れるだけ。
我慢だ・・・。
はあ、やばいな、俺が何も言わない事をいいことに好きかってやってやがる。
でも流石にあれはないよな。
如何したもんか。
「あ、試しに召喚術でもやってみよう!」
呟きいそいそと魔方陣を書いていく。
俺は教えないからきっと独学なのだろうけど、意外に確りと学んでいるな。
だがまだまだ甘い。
魔方陣に書く論理がなっていない。
それじゃあ失敗するだろうな。
「うわわ」
魔方陣が一瞬光、大量の煙を出す。
言わんこっちゃない。
ケホンケホンと咳き込むあいつを見、ため息を吐く。
基礎もまだろくに習ってないくせに高度の召喚術を使うなんて、
無謀というか馬鹿というか、もう呆れてものも言えない。
「ッ!?」
強い魔力反応がある。
まさか召喚に失敗してやばいものを呼んだんじゃないよな?
「先生〜私鳥系を呼んだはずなのに・・・何か無駄に大きいんですけど」
確かにな。
恐ろしくでかい。
でもあれは鳥系の理論じゃなかったぞ。
あ〜もしかして色々勘違いてるんじゃないか?
煙が薄くなるにつれて見えてくる巨体。
警戒しつつも目を良く凝らして見ると見えてくる全貌。
・・・ドラゴンか?
どう見てもドラゴンだよな?
何て恐ろしい奴だ。
ドラゴンは気高い生き物。
人間に召喚されるのをもっとも嫌う種族で、
召喚する際には絶対しないというのが魔法協会での暗黙のルール。
協会では教えなかったのだろうか。
否、一番最初に教える手はずになっているはず。
お前・・・話聞いてなかったな!!
絶対そうだ。
そうに決まってる。
じゃなかったら、ドラゴンを召喚して喜んでいるわけいない!
「キャー先生見てみて!!ドラゴンですよ!ド・ラ・ゴ・ン!!」
俺が現実逃避をしている間も、ギャーギャーと煩い。
ドラゴンも煩かったのか、尻尾で邪魔そうに振り払ってくる。
だがこっちから見ると攻撃してきている様に見えてしまう。
そんな攻撃も何のそのとばかりに避け、尚もキャーキャー喜んでいる。
並ではないすばしっこさと、体力に目をはる。
まあ、ドラゴンに攻撃されても喜んでいる度胸は認めよう。
それに一応金持ちだそうだが、鼻にかけた感じもないし、忍耐力はある・・・のか?
無謀だが、磨けばあいつは光る。
弟子として育ててみるのもいいかもしれないと一瞬思ってしまった俺がいる。
「先生〜ドラゴン怒ってるみたいなんで、さっさと還して下さ〜い!てか倒して?」
いや、倒すのは無理だから。
本気でドラゴンと戦ったら、ここら辺一帯消えるから!
「早く〜!!」
うわ、そんなに叫んでドラゴンをこれ以上怒らせるなよ。
ドラゴンの目が据わりつつあるから!!
「今どうにかするから、ちょっと黙ってろ!」
あーあー、結局俺が後始末することになるんだな。
いつの間にかあいつのペースに乗せられているよ俺。
にしても普通召喚を失敗してドラゴンはないよな。
如何にかするって言っても、如何したもんか。
頭が痛い。
だが今後も何を遣らかすのやらと、うんざりしつつも面倒見る気でいる俺。
初めての感情に何だがモヤモヤとしてすっきりしない。
この気持ちはどうしたらいいんだ?
あいつと関ってからろくでもない事ばっかりな気がするのは、俺の気のせいか?